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2014年4月5日

2013年の物語賞:Kyrieの夏、きらきら。

2014年2月16日に、モレスキナリーは5歳の誕生日を迎えました。5周年を記念して、モレスキナリーではみなさんに、過去5年分のモレスキンを改めて読み返し、その中から特に印象深かった物語を紹介してくれるよう募集しました。そして、「2013年の物語賞」を今年は3つ選考しました。応募して下さったみなさん、また応募を検討して下さったみなさん、本当にありがとうございました。では、今日は1つ目の物語賞を発表したいと思います・・・

1つ目の「2013年の物語賞」は、広島在住、リュックを背負ってカメラとノートブックを持って旅行して書くのが好きだというKyrieさんに贈りたいと思います。Kyrieさんは、お父さん最期の夏のきらきら輝く思い出を綴ってくれました。

「2013年、私は初めてモレスキンを使い始めた。1年で4冊。いずれもポケットサイズで、ルールドだったりスクエアードだったり。これまで使っていた手帳より小さかったので、不安に思うこともあったが、ページはたっぷりあって、乱暴に扱っても屋外でものを書いても、しっかり私を受け留めてくれる素敵なバディだった。「浮かれた夏を過ごしたい」と、私は3冊目の黒い表紙にきらきら光る熱帯魚のシールを貼った。私はそれを「夏モレ」と名づけ、暑さと忙しさにかまけて書き込むことも少なくなったが、仕事にも遊びにもどこにでも持っていた。

夏も終わる頃、父の命の果てが見えてきた。病院を出て、父が元いた施設が最期の時間を過ごす場所を提供してくれた。父と私はあまり仲がよくなく、それまでは滅多に会いに行くことはなかったが、この施設に戻ってきてからは、毎週末、私は父に会いに行った。私は車を持っていないので、毎日通う母とともに、朝早く起き、リュックにたくさんの洗濯がすんだものを詰め込み、モレスキンとカメラを担いで、徒歩と電車で父のところに行った。私は道中、移り変わる季節や再開発で閉じていく街を撮り、母と咲いている花やこれからのことを話しながら歩くのが常だった。

父のところに着いて、洗濯物を片づけたり、持って帰るものの整理をしたりしたあとは、椅子が一脚しかないので母がそこに座り、私は父のベッドに座り、彼の足元でモレスキンを開いた。そして私が自室やカフェでやるのと同じように、あったことや思いついたこと、やりたいこと、自分の気持ちなどを書きつけた。そして表紙を閉じるときらきらの熱帯魚がモレスキンで泳いでいた。晴れていて、光がたっぷり入る部屋。もうしゃべることもせず、たまに目を開けて私たちをじーっと父は見ていた。それは澄んだ赤ちゃんのような無垢な瞳で、じーっと見ていた。彼の目もきらきらしていて、そのときの空間もきらきらしていた。

いのちってきらきらしているんだ。私はそう思い、そしてなんてきれいなんだろうと感じた。

それから、父はゆっくりと衰えていき、それなのにお肌はすべすべでまるで雲母をまぶしたようにきらきらしていた。すごく不思議で、すごく美しかった。」

「父に会いにいく母もまたきらきらしていた。 どこにそのパワーを秘めているのだろう、と思うほど、彼女は全身からごうごうと音を立てていそうなきらめきを放ち、父のために献身的に動いていた。泣きながらも、強くある彼女の姿に私はいつも圧倒されていた。 特別なことはせず、私は写真を撮ったり、母としゃべったりしながら父のところに通い続けた。そして反抗的な娘は必ず午前中で帰った。それが私の精いっぱいだった。

そんなふうに過ごして3カ月が経った早朝、電話が鳴った。母と私は飛び起きて、身支度を整え、私は母に自分の手帳を持つように言い、自分もまたモレスキンを忘れないようにリュックに入れた。季節は移っており、熱帯魚が泳いでいたモレスキンも使い終わった。誕生月が近づいてきていたので、私は4冊目に白いモレスキンを選んでいた。タクシーで施設に向かっていると、窓から大きな月が見えた。夜が終わって朝が始まる空にぽっかりと丸く浮かぶ月もまたきらきらしていた。父はもう息をしていなかったが、まだ温かかった。そのぬくもりがあるのに、線香をあげないといけない場面が一番つらかった。父のきらきらは消えていた。

でも、父は美しくなった。生前は彼の父親にそっくりだったのに、棺桶に寝かされてからは彼の母親にそっくりになった。みんな驚いていた。しわもなく色白になってきれいになっていった。

私はモレスキンを支えに動いた。葬儀屋さんの指示をメモし、パニックになった頭を整理するために頭の中のことを書きつけ、「きっと覚えていられない!」とできごとを時系列でメモし、通夜と葬儀を済ませた。またお寺さんがつけてくれた戒名を書いていたおかげで、スムーズにお位牌を作ることができた。パニックになっているときにはなにも覚えられない。とにかく書いて書いて書いた。乱暴に書いても、モレスキンは黙ってそれを受け留めてくれた。」

「葬儀が終わって1週間後、私は誕生日を迎えた。翌日、休みを取っていた私は宮島に紅葉狩りに出かけた。紅葉を愛でるには、最後のチャンスだった。旅行が好きな私がどこかに行くことをしなかったので、私はどうやってでも行きたかった。他の旅行者のように駅でモレスキンにスタンプを押し、宮島口駅でおむすびを買った。 ひとりで、あまり観光客がいない道を通り、快晴の空の下、私は紅くきらきら光る紅葉を見て、写真を撮った。こんな紅葉は見たことなかった。

一通り見終わって、海岸に出ると、私はバッグと水筒と白モレスキンを写真に撮った。なんだかとても満足した。モレスキンにはそっとありがとうを言った。父のことを思い出すとき、私は熱帯魚の泳ぐモレスキンと一緒に思い出す。

私がモレスキンと過ごした2013年はきらきらしていた。」

Kyrieさんのブログはこちら
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*お父さんと過ごす最後の日々に、きらきらと輝くものを次々と発見していくKyrieさんの物語・・・読んでいる私たちの心にもきらきらしたものが生まれるような、本当に美しい物語でした。2013年の物語賞の受賞、おめでとうございます!

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