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2016年3月4日

インスピレーション:「よく書く」ための鉛筆。「よく考える」ためのペン。

モレスキンノートブックに文章を書いたり、絵を描いたりするとき、あなたはどんな筆記用具を選んでいますか?普段は何気ない心地良さで選ぶことが多いと思いますが、その選んだ筆記用具があなたの思考に大きな影響を及ぼしているとするなら…?

ロシア人クリエイターのキリーロバ・ナージャさんが興味深い体験を聞かせてくれました。

Dullaert_trompe
Image by Heiman Dullaart (1636-1684) “Trompe-l’œil トロンプ・ルイユ” from Wikicommons

「イギリスの学校に転校してビックリしたことがある。ロシアではみんなペンを使っていたのに、ここではみんな鉛筆を使って文字を書いているではないか。えっ、だってあの美術の時間に絵を描くための鉛筆ですよ。算数の図形ならまだしも、文章を書いてたんですよ、文章。とても不思議でたまらなかった。

当たり前のようにペンを持ってきた私も、すぐに先生から鉛筆を使うように言われた。が、しばらく鉛筆で書くことに抵抗とためらいがあった。下書きならともかく本番を鉛筆で書くなんて納得がいかない。自分の意見を書いた感じがしないし、それはまるで意見が定まっていない文章のように感じてモヤモヤが続いた。

でもある日、気付いてしまった。鉛筆の上には消しゴムが付いているではないか。これは、消せるぞ。つまり、書き直せる。つまり、気を抜いても大丈夫ということだ。そこから、スラスラと書けるようになった。ロシアの学校では、文字を書くときは必ずペンを使う。私の時代は、ボールペン。親の時代は、万年筆。色は青と決まっている。黒では駄目だし、赤は先生の色だ。鉛筆は、ペンケースの中で眠っている、出番が美術の授業と算数で図形を描くときにしかない地味なやつという立ち位置だ。

では、なぜペンを使うのか。そこには、おそらく理由がある。簡単にいうと、ペンは一度書いたら終わりだ。書いたものは直せない。実は、これが最重要ポイントだ。例えば、作文を書くとしよう。鉛筆ならちょっと考えてすぐに書いてみるに違いない。「なんか違うなあ」と思ったら消してまた書けばいい。でも、ペンならまずとてもよく考えないといけない。何を書くか。どう書くか。スペルは。レイアウトは。言葉の区切り方は。時には、試しに下書きを書くこともある。このときは、鉛筆を使うこともある。全てを隅々までイメージできたら初めてペンを持って書くという仕上げに入る。

書いたものは、消すことができない自分の意見として永遠に紙に刻まれる。だから、意見もそれなりにしっかりするし、なによりキレイな考え抜いた文章が残る。つまり、「よく考える」を極めた文章になるわけだ。なぜ、そこまでするようになったのだろうか。裏には、採点方法がある。内容の他に、書き方自体も評価の対象となる。文法やスペルももちろんだが、字や改行などのキレイさも見られる。間違えたら、もちろん減点。5段階しかない評価システムなので1つでも下がったらかなりのダメージだ。だから、書き直すしかない。書いた文章全部を。数ページの文章を書き直すのはかなりの時間と集中力を必要とするので、なるべく書き直しは避けたい。宿題なら数時間かけて、ノート一冊分使って何度も書き直してもいいが、テストだと時間切れにもなり得る。

だから、よく考えてから書くことを自然と覚えていく。鉛筆を使って「書きやすく」するのか、ペンを使って「考えやすく」するのか、実は書く道具がそのプロセスを決めるのだ。…」

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