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2019年4月21日

インスピレーション:本棚に入れておくもの

Adina
Image by Adina Tudor from myMoleskine

カリエール:本棚は、必ずしも読んだ本やいつか読むつもりの本を入れておくものではありません。その点をはっきりさせておくのは素晴らしいことですね。本棚に入れておくのは、読んでもいい本です。あるいは、読んでもよかった本です。そのまま一生読まないのかもしれませんけどね、それで構わないんですよ。

エーコ:知識の保証みたいなもんですよ。

トナック:ワインセラーにも似ていますね。全部飲んでしまったら困りますね。

カリエール:ワインといえば、私もずいぶんためこんでいて、かなりの本数を子供たちに残すことになるだろうと思います。まず、飲める量が年々減ってきていますし、そのうえ買う量は年々増えてきてますからね。しかし、私は、気が向いたらいつでも地下のワイン庫へ降りていって、最高のヴィンテージを開けて飲むことができるんです。プリムール買いもよくします。これは、収穫の年に買ったワインが、三年後に届くという仕組みです。プリムール買いの利点は、上質のボルドーワインであれば、生産者がまず樽で、次に瓶で、熟成させるのですが、その間の保管状態がこのうえなくよいということです。三年も預けておけば、ワインは柔らかくなりますし、うっかりフライング飲みしてしまう心配もありません。じつに素晴らしい仕組みです。三年後には、注文したことさえ忘れてしまっています。思いがけず自分からのプレゼントを受け取ることになるんです。これは美味しいですよ。

トナック:書物の場合も同じようにするべきではないでしょうか。セラーに入れる必要はないとしても、いったん脇によけておいて、熟成させる、といいますか。

カリエール:そうすれば、とにかく、あの忌まわしい「新刊強迫症」に対抗することはできますね。新刊だから読まなきゃならないという例のあれです。「話題の」本をとっておいて、三年後に読んだっていいじゃありませんか。映画だと私はよくそうしてますよ。観なきゃならないものをすべて観る時間がないものですから、いつか、よし観ようと思いたつ時が来るまで、一部を保留にしておくんです。しばらくすると、ほとんどの映画について、観たいとか観なくてはとかいう気持ちがなくなっていることに気づきます。そういう意味で、プリムール買いは、フィルタリングの一種なのかもしれません。三年後に飲みたいものを選び出しているんですから。少なくとも私はそう思いますよ。」

  • ジャン=クロード・カリエール(1931-、フランスの作家、劇作家、脚本家)
  • ウンベルト・エーコ(1932-2016、イタリアの中世学者、記号学者、哲学者、文芸批評家、小説家)
  • ジャン=フィリップ・ド・トナック(進行役)

『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』(阪急コミュニケーションズ)の『我々が読まなかったすべての本』より一部抜粋

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